ヒッチハイク
日本でも時々見かける様になったヒッチハイク。ヨーロッパでは当たり前の風景として大勢の若者が道端に立っている。
そんな中、私もイギリスのケンブリッジでヒッチデビューを果たした。当時は一日10ドルを目標にしていたが、どんなに切り詰めても交通費が思わぬ出費となった。そこでヨーロッパ人を真似して道端に立ってみた。
どんな事にも最初は不安が付き物だが、やってみると意外にも簡単に車は止まってくれた。特に初めて止まってくれた車は今でも忘れられない。それはイギリスの典型的な美人で、ほっそりとしたほほ、くっきりとした鼻、後ろで束ねられたアップの髪の毛にずっと釘付けで、どこをどのように走ったか覚えていない。当時流行っていた歌手シーナ・イーストンにそっくりの彼女は「ここでは車が止まらないから、もっと条件の良いメイン通りまで乗せていってあげる」とやさしく声を掛けてくれた。何事にも最初が肝心で、気を良くした私はその後、フランス、オランダ、ドイツへと大勢の運転手に助けられ楽しく移動する事が出来た。
フランスでは2日間も同じ場所でがんばった事もある。ベルギーでは乗せてもらった農夫の家に泊めさせてもらった。ドイツではホモが多く、少し困ったがごまかして何とか切り抜けた。高速の入口では禁止になっているらしく警官に追いかけられた事もあった。
少しの勇気と足りないお金があれば、旅はまた、違う発見と出会いが生まれる。ヒッチハイクの思い出は車に載った数だけ残る。
下痢
突然、汚い話題になってしまったが旅人にとっては避けて通れない話なのである。特にアジアを旅すると2、3日目で症状を起こす。インドなんか行くと下痢が止まらなくて旅どころではないのだ。
ほとんどの原因は水。最近はミネラルウォーターも各地で見受けられるようになったが、貧乏旅行者がそんな物買っていたら、すぐに破産してしまう。「現地人も飲んでいるんだから飲めないことはない」というのが私の主義。インドの辛いカレーを食ったら飲まずにはいられない。がぶ飲みしか辛さを抑える以外に手は無い。次の日には「やっぱり」てことになっちゃうんだけど。
また、現地で見かけるお菓子や珍しい果物は、たいがい口の中に入れる。問題なのはそれが腐りかけているか判断が付かないことである。「ちょっとすっぱいな」と思っても「こんなもんか」とついつい口に入れてしまう。初めて口に入れるんだから仕方が無いのだ。食べ過ぎる事もよくある。ドリアンなんかは、丸ごと買ってきて飯も食わず一日中食べている。100m先からでも分かるドリアンの強烈な臭いをかぐと無性に食べたくなるドリアン中毒にかかってしまった。そして食べすぎで「やっぱり」という事になる。
注意していても分からない事もある。アジアで見かける私の大好物はケイン(サトウキビ)ジュース。2枚の歯車から出てくる竹のようなサトウキビの屋台に出会うとつい列に並んでしまう。ポタポタと落ちる搾りたてのジュースは、程よい甘さの最高の飲み物である。問題はジュースに入れられる氷である。氷屋は大きな町には1つはあるが、屋台には保管する場所が無い。移動しているので電気も無い、50度近い気温では保管は無理であろう。不思議だなと思っていたら、インドの田舎で目撃してしまった。それは、土から掘り出されていた。始めは何か分からなかったが、水がかけられると徐々に氷の塊である事が判明した。インド?千年の知恵であろう。「袋にでも入れてから埋めろよ」と思ったが、表面を少し溶かせば綺麗な氷になるので「まあ、いいか?」
さて、下痢になった場合の直し方であるが、インドで薬では治らない。1に絶食。2に絶食である。2日も食べないと下痢は簡単に止まる。食事代が浮くし、金も掛からない。止まったらまた、ドリアンを食べたり、ケインジュースを飲める。でも、「また、やっぱり」なのではあるが、人間の体は良く出来ている。1ヵ月も下痢と絶食を繰り返していると、胃がなれて何を食ってもビクともしなくなるのである。これでインド人に一歩近づく事が出来る。何でも驚くほど食べられる。
しかし、日本に帰ってきて困った事があった。慣れない水に胃が反応して下痢が続いた。慣れるまでにまた1ヵ月。日本ではミネラルウォータを飲みましょう。