ペルー (カバナコンデ)
コンドルは飛んでいかない
私はナスカの地上絵を見た後、どうしても見たいものがあり、ペルー第二の都市アレキパへ急いだ。
アレキパから更にローカルバス2台を乗りついで6時間。最終目的地カバナコンデに着いた頃には、日も暮れ夜の10時になってしまった。
近くで宿を経営しているという客引きのおばちゃんに連れられ、この日は久々のあったかい食事にありついた。おばちゃんにバスの時刻を確かめ、明日の為にすぐに就寝。
朝7:00。一番のバスで出発。と思いきや、やはりここはローカルタイム。定時の7時を過ぎた辺りから民族衣装を着た行商のおばちゃんがぞろぞろと集まりだした。大きな荷物はバスの天井に上げるので一人来る毎に時間がかかる。結局出発は7:30になった。
1時間ほどバスにゆられ、十字架の立つ広場で途中下車。先ほどのおばちゃんたちもほとんど降りた。あとで分かったがこのおばちゃんたちは、この広場で風呂敷を広げ、土産物を売っていた。大きな荷物はこの為だったのである。
さて、私は何を見に来たか?目の前に、あの有名な歌「El Condor Pasa(コンドルは飛んでいく)」の1500mの切り立った渓谷が連なる。そう、私はコンドルを見に来たのである。
50人ほど集まった観客は、全員が「まだかまだか」と空を眺めている。時折歓声が上がるがそれはチョウであったり、小さな鳥であった。待つこと3時間。昼ごろには「コンドルは飛んでいかない」の歌詞に変わっていた。
次の日も懲りずに早朝起きて広場までバスで行った。すでに大勢の観客が空を見上げていた。1時間も待ったその時、全員が拍手喝采の歓声を上げた。優雅に上昇風をつかんだ一羽のコンドルが目の前を横切っていく。それからいろんな方角からコンドルは飛び立った。しかし、残念ながら歓声が大きすぎたのか、カメラには撮れないほど遠くで飛んでいる。その日は6羽ほどの出演で幕は閉じられた。
実はコンドルは飛べない鳥である。いや、飛べるが自分で羽ばたいて飛ぶことができない唯一の鳥なのである。いわば羽が固定したグライダーと同じである。だから彼らはテイクオフ出来る高い岩場まで歩いて上がる。ヒョコヒョコと登山道を上っている風景が「目がテン」で紹介されていた。私もパラグライダーをやっているがコンドルの気持ちはよくわかる。重い荷物を担いで上がる苦労に見合った良い条件の風が吹くまでひたすら待つ。コンドルも同じ仲間だ。みんな自然相手のスポーツを楽しんでいる。
3日目もまた、コンドルにエールを送るためにこの岩場にやってきた。
文、写真 寺島